日本の小学校最大のイベントといえば,まちがいなく運動会だろう. 学校を卒業した大人への「学校行事の思い出といえば」というアンケートでも,運動会を挙げる人も多い. かつての運動会といえば,気候が安定する秋の体育の日の前後の日曜日におこなうことが多かったが,今は都市部を中心に春(初夏)におこなうことが多くなってきている.
大運動会と小運動会と,年2回行うところもあり,地域や学校によって差がある. もともと,北海道や九州や四国の一部では,春に運動会を行う学校が多い. 北海道の場合,10月になれば平地でも初雪が降ることもあり,秋は寒過ぎる. 九州や四国は,台風の影響で中止になるリスクが高く,春の方が運動会のベストシーズンなのだ.
特に,地方の運動会は学校行事の範囲を超えて行っている地区もある. 保護者だけばかりか,親戚や就学していない近所の人まで集まる一大イベントになっている. もともと,農作物の収穫時期を祝う秋まつりの延長線上のイベントとして考えている地域もある.
ではなぜ,東京都や千葉県の都市部では,秋から春に変更することが多くなっているのだろうか. 地域によっていろいろと理由はあるだろうが,背景にはゆとり教育,学校週5日制(週休2日制),3学期制から2学期制(前期,後期)への移行,絶対評価,ひとりっ子家庭の増加などがあるといわれる.
学校では,各学期ごとに大きな行事を一つずつ行うことが多い. たとえば3学期制の場合,1学期には学習遠足,2学期には運動会と学習発表会などと修学旅行,3学期には卒業式といった具合だ. 後期に運動会をおけば,学習発表会か修学旅行(学習遠足)を前期に移動しなければならない. 結局,運動会を移動させることになる.
日本の2学期制導入の目的は,「3学期制から2学期制にすれば,始業式や終業式,定期テストなどの回数が減り,その分を授業に回せ,学校での教育活動をより充実させることができる」とされてきた. 公立小中学校の学期制の選択は,市区町村教育委員会(教委)が学校管理規則で定め,校長の権限で2学期制なのか3学期制なのかを選べるようにしている.
では,2学期制にしてから学校全体の学力が上がったのかといえば,そのような明確な数値もなく,むしろデメリットの方が多いという結果となっている. 2学期制では,期間中に長い夏休みや冬休みが入ってしまい学習のメリハリがつかなくなってしまった. また,高校では9月末に期末テストがあると,国体や野球などの秋季大会とかぶってしまう.
2学期制は,欧米のセメスター制(2学期制),クォーター制(4学期制)などをまねたものといわれる. そもそも4月入学の日本と,夏休み直後の9月入学の欧米や中国などの制度とは合わない.
2学期制をおこなうのなら,事実上の国際標準である9月入学もあわせて導入すべきだという人もいる. やはり,日本全体の制度そのものを変えないと2学期制は合わないというのが結果だったようだ.
▼世界の入学時期.
1月:シンガポール
2月:オーストラリア,ニュージーランド
3月:韓国
4月:日本
5月:タイ
6月:フィリピン
9月:アメリカ,カナダ,イギリス,フランス,ベルギー,トルコ,モンゴル,ロシア,中国
横浜市の小中学校のほぼ全校が2学期制を導入をしたものの,3学期制に回帰している小中学校が増えてきている. 学力を重視する中学校や高校では,「夏休み前期末テストを終えて通知表をもらって自分の学力を評価し,夏休み期間中に目標をもって自主学習させたい」,「夏休み前に通知表(成績表)がないと,夏休み期間中の補習指導の動議付けができない」といった保護者の声も聞かれる.
埼玉県久喜市で保護者へおこなったアンケートでは,3学期制を支持する声が2学期制より3倍も多かった. 群馬県の高崎市や高松市でも,3学期制を復活させた. さらに,大阪市では,月1回程度,東京都で年3回から18回(学校による)の土曜半日授業(半ドンの授業)を復活させている.
2学期制から3学期制へ復活したからといって,秋の運動会も復活するかというと,そうでもないようだ. 野外でおこなう運動会は,どうしても天候に影響されやすい. 日本の平均気温は,1898年(明治31年)以降100年あたりでおよそ 1.1℃ の割合で上昇している.
この地球暖化の影響で,熱中症や熱射病が頻発し,そのおそれから水分の補給をこまめにうながすなど気を使わないといけない. 気候のことだけを考えるのなら,これからは11月などの初冬(晩秋)に開催した方がベストという意見もある. 「スポーツの秋」は,もはや過去のものになりつつあるのかもしれない.
このような最近の運動会だが,運動会のようすも大きく変わってきている....続きを読む
大運動会と小運動会と,年2回行うところもあり,地域や学校によって差がある. もともと,北海道や九州や四国の一部では,春に運動会を行う学校が多い. 北海道の場合,10月になれば平地でも初雪が降ることもあり,秋は寒過ぎる. 九州や四国は,台風の影響で中止になるリスクが高く,春の方が運動会のベストシーズンなのだ.
特に,地方の運動会は学校行事の範囲を超えて行っている地区もある. 保護者だけばかりか,親戚や就学していない近所の人まで集まる一大イベントになっている. もともと,農作物の収穫時期を祝う秋まつりの延長線上のイベントとして考えている地域もある.
ではなぜ,東京都や千葉県の都市部では,秋から春に変更することが多くなっているのだろうか. 地域によっていろいろと理由はあるだろうが,背景にはゆとり教育,学校週5日制(週休2日制),3学期制から2学期制(前期,後期)への移行,絶対評価,ひとりっ子家庭の増加などがあるといわれる.
学校では,各学期ごとに大きな行事を一つずつ行うことが多い. たとえば3学期制の場合,1学期には学習遠足,2学期には運動会と学習発表会などと修学旅行,3学期には卒業式といった具合だ. 後期に運動会をおけば,学習発表会か修学旅行(学習遠足)を前期に移動しなければならない. 結局,運動会を移動させることになる.
日本の2学期制導入の目的は,「3学期制から2学期制にすれば,始業式や終業式,定期テストなどの回数が減り,その分を授業に回せ,学校での教育活動をより充実させることができる」とされてきた. 公立小中学校の学期制の選択は,市区町村教育委員会(教委)が学校管理規則で定め,校長の権限で2学期制なのか3学期制なのかを選べるようにしている.
では,2学期制にしてから学校全体の学力が上がったのかといえば,そのような明確な数値もなく,むしろデメリットの方が多いという結果となっている. 2学期制では,期間中に長い夏休みや冬休みが入ってしまい学習のメリハリがつかなくなってしまった. また,高校では9月末に期末テストがあると,国体や野球などの秋季大会とかぶってしまう.
2学期制は,欧米のセメスター制(2学期制),クォーター制(4学期制)などをまねたものといわれる. そもそも4月入学の日本と,夏休み直後の9月入学の欧米や中国などの制度とは合わない.
2学期制をおこなうのなら,事実上の国際標準である9月入学もあわせて導入すべきだという人もいる. やはり,日本全体の制度そのものを変えないと2学期制は合わないというのが結果だったようだ.
▼世界の入学時期.
1月:シンガポール
2月:オーストラリア,ニュージーランド
3月:韓国
4月:日本
5月:タイ
6月:フィリピン
9月:アメリカ,カナダ,イギリス,フランス,ベルギー,トルコ,モンゴル,ロシア,中国
横浜市の小中学校のほぼ全校が2学期制を導入をしたものの,3学期制に回帰している小中学校が増えてきている. 学力を重視する中学校や高校では,「夏休み前期末テストを終えて通知表をもらって自分の学力を評価し,夏休み期間中に目標をもって自主学習させたい」,「夏休み前に通知表(成績表)がないと,夏休み期間中の補習指導の動議付けができない」といった保護者の声も聞かれる.
埼玉県久喜市で保護者へおこなったアンケートでは,3学期制を支持する声が2学期制より3倍も多かった. 群馬県の高崎市や高松市でも,3学期制を復活させた. さらに,大阪市では,月1回程度,東京都で年3回から18回(学校による)の土曜半日授業(半ドンの授業)を復活させている.
2学期制から3学期制へ復活したからといって,秋の運動会も復活するかというと,そうでもないようだ. 野外でおこなう運動会は,どうしても天候に影響されやすい. 日本の平均気温は,1898年(明治31年)以降100年あたりでおよそ 1.1℃ の割合で上昇している.
この地球暖化の影響で,熱中症や熱射病が頻発し,そのおそれから水分の補給をこまめにうながすなど気を使わないといけない. 気候のことだけを考えるのなら,これからは11月などの初冬(晩秋)に開催した方がベストという意見もある. 「スポーツの秋」は,もはや過去のものになりつつあるのかもしれない.
このような最近の運動会だが,運動会のようすも大きく変わってきている....続きを読む