千葉県土整備部施設改修課の担当者は,県内のある施設のIs値(構造耐震指標値)を見て驚いた.Is値が0.11 しかなかったからだ.
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1995年1月に発生した M7.2 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の教訓から,1995年(平成7年)12月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行され,新耐震基準を満たさない建築物について積極的に耐震診断耐震改修を進めることとされた. いわゆる,耐震改修促進法だ.
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これにより,耐震改修(耐震化)が進められたが,限られた予算の中,なかなか進まない耐震改修に,2013年(平成25年)11月にさらに耐震改修促進法が改正され,学校,老人ホーム不特定多数の方が利用する大規模な建物の耐震診断と報告を義務付けした. 学校などの耐震改修はほぼ終了し,つぎの優先順位の施設に着手し始めていた.
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Is値が 0.11 しかなかった施設は,千葉県市川市福栄4丁目の行徳野鳥観察舎の1階部分だった. Is値は構造耐震指標値といい,震度6から震度7程度の地震にどのくらい耐えられるかを表す指標となっている.
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Is値が0.6以上の場合,倒壊する危険性が低い. Is値が0.3以上0.6未満は,倒壊する危険性があり,Is値が0.3未満は倒壊する危険性が高い .Is値が 0.11 となると耐震改修のコストより,建て替えたほうがよいレベルとなる.
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行徳野鳥観察舎がある行徳内陸性湿地は,1970年代の埋め立て時に,宮内庁新浜鴨場であったことから,ここだけ埋め立てから免れた. 千葉県行徳鳥獣保護区(市川野鳥の楽園,56ha)にも指定されている.
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行徳野鳥観察舎は,千葉県により1976年(昭和51年)に設置され,現在の鉄骨造3階建ての施設(延べ床面積は605.78m2)は1979年(昭和54年)に完成した.
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東京メトロ東西線南行徳駅から徒歩約22分,南行徳駅から徒歩約23分,JR京葉線市川塩浜駅から徒歩約32分の場所となる. 入場料,駐車場は無料(駐車場は狭い)となっていた.
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毎年1万羽を超える野鴨などの渡り鳥が飛んでくる場所で,これが都心部と思うほど自然が残っている. 大都市の中にある数少ない野鳥の生態に触れる機会の場として,約36年間にわたって運営してきた. 千葉県から市川市に管理を委託されていた.
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計44台の望遠鏡が設置され,小学校の1クラス相当の児童が一度に使うことができ,課外授業として使われてきた. 2014年度の観察舎の年間利用者数は1万2885人で,これだけの施設としては利用率はよくなかった.
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2015年7月6日(月)-7月8日(水)に,現地で耐震診断がおこなわれていたが,1981年(昭和56年)に新耐震基準が改正される前の,旧耐震基準で建てられた施設であったこともあり,想定を超えるの結果が出てしまった. 2015年12月28日をもって,緊急休館となってしまった.
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千葉県は,公の施設の見直し方針案を行政改革審議会に諮問しているが,「千葉県の施設としては廃止せざるを得ない」という提案を出している. 市川市市民からは存続の署名活動などが行われ,市川市長も存続を要望している. 市川市が単独で建て替え費用を負担して,存続させる方法も模索している.
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谷津干潟同様,行徳内陸性湿地と三番瀬をセットにしてラムサール条約への登録を検討してほしいという声もあるが,国道357号第二湾岸道路の計画もあり,千葉県はラムサール条約への登録へは消極的だ.
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