横浜線鴨居駅(かもいえき)近くの郊外型総合ショッピングモール「ららぽーと横浜」(神奈川県横浜市都筑区池辺町)は,2005年(平成17年)秋に着工され,2007年(平成19年)3月15日にオープンした.
2007年3月15日にオープンしたららぽーと横浜.
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神奈川県内最大級の13スクリーンを有するシネマコンプレックスTOHOシネマズ,イトーヨーカドー,大丸(2013年1月閉店),東急ハンズ,ノジマなど約370テナントが出店している.
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もともとココは,日本電気株式会社(NEC)横浜事業場で,日本電気ホームエレクトロニクス(NEC-HE,旧新日本電気)などの主力工場となっていた. 日本電気ホームエレクトロニクスは,その他にも玉川事業場(神奈川県川崎市中原区下沼部),我孫子事業場(千葉県我孫子市)の3カ所で,テレビやビデオ,白物家電(洗濯機,冷蔵庫,炊飯器など),家庭用ゲーム機(PCエンジン)などの開発と製造を行っていた.
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かつての家電業界は,自動車業界とならび日本の輸出を支えてきた重要産業だった. だが,海外での知名度の低い日本電気ホームエレクトロニクスは,マーケットシェアは大きくなかった. すでに多くの家庭では,テレビや冷蔵庫といった耐久消費財を保有している状況の中,売り上げは伸び悩み,松下電器(現パナソニック),シャープ,東芝などの競合他社との差別化ができず,さらにマーケットシェア(市場占有率)を落としていく.
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ベータ型ビデオレコーダの失敗,プラズマテレビの失敗,そして家庭用ゲーム機の大失敗によって大きな損失を出してしまう. 1999年9月,親会社である日本電気(株)の経営判断により,携帯電話事業などを分割移管したうえで,会社を解散することが決定する. 2000年3月31日をもって事業活動を終了し,2002年2月には会社を清算した.
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そして2005年(平成17年)5月,日本電気横浜事業場(横浜市都筑区)の土地は売却され,跡地に郊外型商業施設の「ららぽーと横浜」が建設された.
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日本電気横浜事業場跡地に建設されたのは,商業施設の「ららぽーと横浜」だけではない. 大型マンションの「パークシティLaLa横浜」も併設された. 最寄駅である鴨居駅から徒歩11分の場所となる. 「パークシティLaLa横浜」は,12階建4棟(西棟は変階12階建)構成で,総戸数 705戸. 売主は,三井不動産明豊エンタープライズ,販売は三井不動産販売(現,三井不動産レジデンシャル),設計施工は三井住友建設がおこない,2007年12月に完成した. 販売価格は,3,200(1階)-6130万円(12階),平均分譲価格の坪単価は 155万円だった.
2007年3月15日にオープンしたららぽーと横浜.
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2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)後,マンションの異変に気がつく. 建築の知識がある住民が,(棟をつなぐ部分の)手すりがズレていることを見つけたのだ. 2014年のことだった.
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震直後のららぽーと横浜.
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東北地方太平洋沖地震では,東京湾の埋め立て地である「ららぽーとTOKYO-BAY」がほとんど無キズだったのに対して,内陸地である「ららぽーと横浜」は,天井が大規模に崩落するなど大きな被害となった. それだけ,この地は軟弱地だったのだ.
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震直後のららぽーと横浜.
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マンションのパークシティLaLa横浜も,かなりの揺れに見舞われたに違いない. パークシティLaLa横浜西棟の両端(幅約56m)間の高さを計測したところ,高さに約 2.4cm の差がありマンション全体が傾いていることが分かった. 2014年11月,住民から傾きを指摘で三井不動産レジデンシャルが現地に入り事実を確認するが,「3.11 の東日本大震災の影響のため(建物自体には問題ない)」としていた.
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それでも住民は納得しなかったため,2015年2月9-10日に西棟の簡易検査をおこない,約 2cm のズレがあることを認めるものの,「(この程度では)問題ない」としてやり過ごす. 住民から調査は不十分として詳細調査の要請により,2015年6月に西棟の地盤を調査したところ,一部の(パイル)が中間層で宙に浮いた状態で支持層まで到達していなかったことを確認し住民に報告した. そして2015年8月に,横浜市建築安全課が現場を視察することになる.
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パークシティLaLa横浜」の基礎工事は,旭化成建材がおこなった. 西棟だけで52本,全4棟で473本の(パイル)を打ち込んだが,その内西棟の8本が支持層に届いていないか,長さが不十分だった. 今回使ったは,回転させながら打ち込む工法となり,回転の負荷が重くなると支持層に達したことがわかる. その負荷状況をすべてグラフとして記録として残さないといけない. 場所ごとに地質が微妙に異なるため,そのグラフもごとに異なる. そのグラフの一部に,明らかに同じものが複数見つかった.
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別の(パイル)の打ち込みデータをそのままコピーして,管理番号だけ変更していたのだ. 少なくても,3棟で 70本以上のデータが改ざんされていた. また,補強するセメント量の改ざんも見つかった. もう言い逃れできる状況ではなかった. 住民への説明会を何度も開催したが,すでに資産価値を失ったマンションとなってしまったことから,多くの住民は建て替えを希望した. 2015年10月15日の住民説明会には,三井不動産レジデンシャルの社長がやってきて,そこで「全棟建替えを基本に検討する」と表明することになる.
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この手の問題としては,異例の即決となった. すでに横浜市が問題を認識していたこと,マスコミが動いていたことなどを考え,早く解決した法が,今後の販売に有利と考えたのだろう. 三井不動産レジデンシャルは,すでに建設中に把握していたのだはないかと指摘する専門家もいる. 杭打ち工事をおこなった旭化成建材の親会社である旭化成は,過去に旭化成建材が過去11年間にくい打ち工事を手掛けた3040棟の調査をすることを表明することとになる.
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ココの杭打ち工事は2005年12月2006年2月に実施された. 事前のボーリングによる地質調査で,支持層の深さを調べ,を事前に工場で作る工法が使われた. だが,を現場で打ち込み始めたところ,一部の支持層にまで達したデータが出てこなかったものとみられる. 両脇に丘があり,その中央に(鶴見川)が流れているような場所では,河岸段丘(かがんだんきゅう)になっている可能性があり,気を付けないといけないといわれている. まさに今回の場所も,このような場所に相当し,一部のの長さが足りなかった. だが,今回採用したは,継ぎ足しができない構造となっている.
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再発注すれば,1カ月から1.5カ月の工程遅れとなってしまう. そもそも,長さが足りなかったのは,旭化成建材(通称,旭建材)の責任ではない. 責任を明確にするために,元請けである三井住友建設にエスカレーション(より上位に対応を要請すること)していたはずだ. 旭化成建材は,「過去11年間に杭打ち工事を請け負ったのは45都道府県3040件のうち,データ改ざんを認めた現場代理人が関わったデータ流用は19件だった」と発表し.「特定の担当者(現場代理人)による属人的な問題」としたかったようだ. だが,いち担当者が判断できるような問題ではない.
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当初,旭化成建材は,「杭の打ち込み作業中にデータ記録紙が無くなってしまったが,工事の中断ができなかったので,他ののデータをコピーして代用してしまった」と報告していた. その後,旭化成建材がおこなったくい打ち工事で調査が終わった2376件で,360件の杭打ちデータ改ざんなどの不正行為が見つかり,その不正に関与した現場管理者は50人以上にもなった. 社内ぐるみの常習犯であった. 千葉県内でも,23件の偽装が見つかり,千歳市臨空工業団地配水池,千歳市南部浄化センターの汚泥消化タンク,PC DEPOT市原インター店などが該当する.
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三井不動産(三井不動産レジデンシャル)としても,ららぽーと横浜のオープン日である2007年(平成19年)3月15日に合わせるためにも,完成日の変更は譲れなかった. また,完成が1カ月も遅れてしまうと,小中学校の新年度のにあわせた引っ越しも間にも合わなくなる. この時,元請けである三井住友建設がどう関与したかについてはは報告されていないが,旭化成建材に対して「なんとかしろ」といえば,「そのまま進めろ」と同意語となる. この時期,建築関係では別の事件がおきていた.
姉歯建築設計事務所による耐震強度偽装問題で解体するヒューザーのマンション(船橋).
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2005年11月に姉歯秀次による耐震強度偽装事件が発覚,建築確認検査の厳格化の法改正が動き出していたのだ. 2006年4月以降になると,新制度による杭打ちの詳細データがチェックされる可能性があった. データ改ざんの発覚はどうしても避けなければならない. 結局,支持層にまで達していないが複数あったにもかかわらず,そのまま工事を進めマンションを完成させてしまった.
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4棟すべての建て替え費用は 300億円となる. 建て替え中の引っ越し先賃貸の保証などに 100億円の補償を提示する. 引っ越し代の実費に加えて引っ越し諸経費(賃貸契約時の敷金など)として 40万円,家賃補償として月 30万円前後が受けられる. さらに,慰謝料として戸あたり一律 300万円となる. このほとんどを,建設業法違反となった旭化成建材が負担するものと思われる.
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この手の問題では,多くの住民が二重ローンをかかえてしまうことが多いが,今回は稀な例といえる. 建て替える新しいマンションの完成は,2020年ごろとなり,原則以前の同棟,同号室に入居することになる. だが,すでに別の小中学校を通ってしまっていて,もう元の地区には戻れないという家庭もいるため,新築販売想定価格相当額で三井不動産が買い取る(転売)こともできる.
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この事件では,その他にもう2つの不正がみつかった. 設計施工は三井住友建設だが,基礎工事の専門業者である旭化成建材に発注をする. だが,旭化成建材に直接発注はせず,なぜか一次請けとして日立ハイテクノロジーズを経由して,二下請けの旭化成建材となっていた. この流れの中で日立ハイテクノロジーズは工程管理もしておらず,実質上「工事の丸投げ違反」とみなされた.
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日立ハイテクノロジーズの役割が不透明だが,過去にこの手法で政治献金などの捻出をした事例がある. この複雑な流れが,今回の問題を柔軟に対応できなかった原因であったのかもしれない. 建物の完成時に,三井不動産横浜支店が建築確認の申請をおこなうが,必須とされる「杭の載荷試験報告書」を提出しないで,民間建築確認検査機関の日本ERIから「確認済証」を取得していた.
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建築基準法の根幹を揺るがすような行為となる. この事実からも,三井不動産,三井不動産レジデンシャルも,「杭の偽装行為」があったことを知っていたことを裏付けている. これらの建設業法違反の行政処分として,3社に対して15日間の営業停止処分がなされた. 日本ERIも同犯罪者となるはずだが,今回行政処分はされていない.
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習志野市でも,これに似た事件が発生していた...続きを読む