JR東日本は,毎日1万2773本以上の列車(電車)を運行し,1日の利用者数は約1710万人にもなる. 東京圏の朝の通勤ラッシュアワーの時間帯のJR中央快速線,山手線などでは,1時間に30本以上走る(約2分間隔)超過密運転をおこなっている. にもかかわらず,列車が遅れることは少ない. 秒単位の運行時刻表や運転手の時間に対する厳格さなどが,この過密運行を支えている.
JR京葉線のデルタ線内の二俣新町駅.
20161029_JR京葉線_二俣新町駅_ATOS_アトス_1022_DSC09075T20161029_JR京葉線_二俣新町駅_ATOS_アトス_1022_DSC09078
日本に住む外国人も,日本ならではの高いサービスに驚く人も多い. また,乗客側も「順序よく並び降りてから乗車する」というあたり前のルールが確立されていることも,電車が遅れない理由のひとつといえるだろう. 一方で激混みの通勤電車に乗った外国人からは,「発狂したい(日本では通勤地獄という)」,「(日本人は不満も言わず)まるでロボットようだ」といった感想もある.
東京圏の朝の通勤ラッシュアワーの押し屋.
20110529_通勤ラッシュアワー_押し屋_12220110529_通勤ラッシュアワー_押し屋_114
これらの列車の運行を支えているのは人だけではない. 世界最高レベルの鉄道システム群が裏方で支えている. 自動列車制御装置≪ATC≫や,自動列車停止装置≪ATS≫,列車集中制御≪CTC≫,自動進路制御装置≪PRC≫などとなる. 列車には,クルマでいうアクセルとブレーキしか無く,進路を変えるためのハンドルがない. 進路を転換する部分を分岐器(ターンアウトスイッチ)という.
JR京葉線の京葉車両センター.
20160918_JR京葉線_京葉車両センター_ATOS_アトス_1407_DSC0465420160918_JR京葉線_京葉車両センター_ATOS_アトス_1408_DSC04657
かつての鉄道の分岐器(ポイント)や信号機は,人間の手によって動かしていた. ポイントや信号機を間違いなく動かさないと列車は正しい進路に進めない. 1989年(平成元年)常磐線磯原駅(茨城県北茨城市)では,人的ミス(勘違い)で夜間保線工事でレールが取り外された区間に下りJR貨物列車を進入させてしまい,脱線転覆するという事故が発生している.
JR京葉線の南船橋駅.
20161016_JR京葉線_南船橋駅_ATOS_アトス_1211_DSC07693T20161016_JR京葉線_南船橋駅_ATOS_アトス_1211_DSC07695
これらのポイント切り替えや信号を一箇所から遠隔操作するために作られたのが「列車集中制御≪CTC≫」となる. CTCによって効率的な運行管理が可能になったものの,ポイントの切り替えを集中化(センター化)しただけであり,まだ人間の手でおこなわれる. JR東日本の在来線としては,1976年に武蔵野線に初めて導入され,その後1984年に東北本線(白河-石越間),1986年に埼京線に導入された.
20161016_JR京葉線_南船橋駅_ATOS_アトス_1556_DSC07835T20161016_JR京葉線_南船橋駅_ATOS_アトス_1557_DSC07840
さらにコンピュータによって,「輸送総合システム≪IROS≫」の計画ダイヤデータベースと連動して,集中制御できるようにしたものが「自動進路制御装置≪PRC≫」となる. あらかじめ設定した手順にしたがって自動で稼働するが,強風や人身事故などによってダイヤが5分以上遅れると,PRCは使えなくなることが多い.
JR京葉線蘇我駅出発時機表示器.
20160710_JR京葉線_蘇我駅_出発時機表示器_ATOS_12220160710_JR京葉線_蘇我駅_出発時機表示器_ATOS_112
このような問題などを改善する新しい運行管理システムが「東京圏輸送管理システム≪ATOS≫(アトス)」となる. 概ね,半径100kmの東京圏の線区に,1993年から段階的に導入を進めている. JR東日本のATOS(アトス)のシステムの開発は,ジェイアール東日本情報システムと日立製作所がおこなった.
20160627_JR京葉線_蘇我駅_出発時機表示器_ATOS_16220160627_JR京葉線_蘇我駅_出発時機表示器_ATOS_170
同様のシステムは,JR西日本の「アーバンネットワーク運行管理システム≪SUNTRAS≫(サントラス)」,JR東海の「名古屋圏運行管理システム≪NOA≫(ノア)」が稼働している. JR東日本の新しい輸送管理システム≪ATOS≫は,1996年に初めて中央線に導入され,数かずのトラブルを乗り越え,東京圏の各線区に拡大されている.
20160627_JR京葉線_東京駅_出発時機表示器_ATOS_11420160627_JR京葉線_東京駅_出発時機表示器_ATOS_122
人身事故などによって運行障害が起こった場合でも,コンピューターが自動的に列車の運行を調整するしくみを持っている. 駅の電光掲示板(LED式発車標)に自動的に何分遅れなどを表示し,駅ホームにも自動案内放送がされる.
20160903_JR京葉線_西船橋駅_出発時機表示器_ATOS_11220160903_JR京葉線_西船橋駅_出発時機表示器_ATOS_122
2016年9月25日(日)朝 4:00 から,京葉線にも ATOS(アトス)が導入されていることに気が付いていただろうか. 一般客が,ATOS(アトス)が導入されたかどうかがわかりやすいのは,駅ホームの電光掲示板(LED式発車標)の表示や駅ホームなどの自動案内放送となる....続きを読む