東京駅からから電車で25分,駅から徒歩20分ほどの場所に「船橋漁港」がある。都心から一番近い活気がある「漁港」だ。
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この「船橋漁港」の船橋市漁業協同組合(漁協)が中心となって,『地元で採れたものを食べよう』という地産地消(地域生産地域消費)の考え方で,「船橋漁港の朝市」を原則毎月1回がおこなっている。
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2010年8月からの第1回目から毎月第3土曜日午前中に開催してきたが,「コロナ禍」のなか,人の「密」をさけることから現在は開催を見合わせている。
▼船橋漁港内の「三番瀬みなとや」オープン式。
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さらに,常設の水産物直売所「三番瀬みなとや」を2013年(平成25年)8月4日にオープンさせた。この直売所は,船橋漁協直営となる。直売所「三番瀬みなとや」の店舗は約60m2ほどだが,もともとは船員の休憩所だった建物を改装した。
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その直売所ができる前から,一部の民間水産会社が小売りを行っていたが,店舗形態とはなっていなかったため,一般市民が購入できるような状況ではなかった。
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2020年(令和2年)3月,この「三番瀬みなとや」が大変身をした。
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船橋市宮本の船橋大神宮近くになある「ふなばし美術学院」の生徒が,「三番瀬みなとや」建屋とコンテナ型倉庫に絵を描いたのだ。ふなばし美術学院」は東京芸術大学や美術大学の美術予備校となる。
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海産物直売所「三番瀬みなとや」では,三番瀬で養殖された海苔,アサリ(500g=500円)をはじめ,近年では外来種のホンビノス(700g=500円)を販売する。
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鮮魚は季節によって水揚げが変わるが,夏はスズキや珍しいホウボウが捕れることもある。ただし,11月から4月の間のスズキは資源を保護のため禁漁となる。

▼出世魚3年目の「スズキ」。
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船橋のスズキの漁獲量は全国1位で,「江戸前船橋の瞬〆(締め)スズキ」としてブランド化している。頭と尾に包丁を入れ,血抜きを施したあと,尾から背骨に向けてエアガンで一気に神経を抜き取る。
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神経締めを行うと「活け」の状態から死後硬直の状態までの時間を伸ばす事ができる。料理をする時点で死後硬直状態でないと,包丁が入れにくくなり,おいしく魚をさばけない。
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生物は死ぬと,乳酸などの疲労物質が増え,筋肉を伸縮させるタンパク質であるアクチン(Actin)とミオシン(Myosin)が結合して筋肉が収縮する。これを,死後硬直状態という。
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マダイやヒラメ,ブリなどの魚では,0度近い氷水で冷やすと死後硬直状態が早く終わってしまう。単に冷やせば新鮮ということでもないのだ。
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船橋市は都心に近い立地要件から,運搬で生じるロスが最低限ですむ。地方の漁港から魚を運ぶよりも鮮度の点で優位に立つことができ,「江戸前船橋の瞬〆(締め)スズキ」は高級魚として2割ほど高く売れる。
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船橋の「三番瀬みなとや」は,都市型直売所としてどのような需要あるのかやどのような販売方があるのかを見極めるアンテナショップ的役割がある。
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客からの声で,青空のもとで漁港を見ながら軽食が食べられるオープンスペースを開設し,ホンビノス貝などを食べられるようにした。
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では,今後はどのような計画(案)があるのだろうか。
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船橋市も船橋漁港の東側(ららぽーと側)に,観光を目的とした活性化プランを練っている。
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2002年度(平成14年度)に船橋市が策定した「『海を活かしたまちづくり』基本構想・基本計画」では,「東京湾で捕れた魚の市場,シーフードレストランなどのフィッシャーマンズワーフを整備」。
▼釧路フィッシャーマンズワーフ(観光物産館的内容)。
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さらに,「東京湾博物館などを国・県などにはたらきかけて整備」,「交流空間としてのインナーハーバーを創出」などをあげている。
▼2002年に作成された「船橋港マリーナ」のイメージ図。
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また,2014年度(平成26年度)に策定した「船橋市臨海部の回遊性創出に向けた基本構想」では,「農水産物直売所」,「地産地消レストランやカフェ」,「臨海部情報発信拠点(観光案内,工場見学受付,地場産業PR)」,「水上バス案内所」,「レンタサイクルポート」,「展望施設」などと,より具体的な施策(たたき台)があげられている。
▼千葉みなと桟橋の旅客船ターミナル等複合施設「ケーズハーバー」。
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これらの施策の中で実現できたのは,「船橋ボートパーク(マリーナ・ヨットハーバー)」,「農水産物直売所」,「観光案内所の設置(ららぽーと内)」だろうか。
▼船橋港のヨットハーバ「船橋ボートパーク」。
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今後の施策の展開で,中核施設となるのが浜町2丁目の市有地(4,054m2)に計画されている「みなと拠点施設」となる。あわせて,隣接する「千葉県教育庁葛南教育事業所」,「葛南港湾事務所」の土地取得,元南極観測船 SHIRASE(しらせ)の誘致にも動いているものと思われる。
▼ピンク線内が開発されると思われる範囲(筆者の想定)。
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同様の直売所として,相模湾ではあるが神奈川県横須賀市にある長井町漁業協同組合直営の「すかなごっそ・さかな館」が2014年5月9日にオープンしている。JAよこすか農産物直売所と併設されている施設となっている。「すかなごっそ」とは,「横『すか』の『ごちそう』」という方言から命名された。
▼神奈川県横須賀市の「すかなごっそ・さかな館」。
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また,千葉県内では,鴨川市小湊漁業協同組合の直売所「活き活き小湊ウオポート」,南房総市の富浦漁業協同組合の直売所「おさかな倶楽部」,勝浦市の新勝浦市漁業協同組合の直売所「勝浦海中公園直売所」などと,漁協直営の直売所が広がっている。どこの施設も規模が大きい。
▼千葉県南房総市の富浦漁業協同組合の直売所「おさかな倶楽部
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船橋市の「みなと拠点施設」も期待が出てくる。「南船橋駅前の開発」もスタートし,この「みなと拠点施設」でホンビノス貝焼きや冷蔵していない新鮮な刺身などが食べられる日も近いかもしれない。
▼千葉県南房総市の相浜漁業協同組合の直売所「ハマノイソッピ」。
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