新型コロナウィルス感染症(COVID-19)」のため,飲食店の休業や営業時間の短縮が相つぎ,どこの飲み屋街(夜の街)も閑散としている。
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テレワーク(在宅勤務)や自主的な外出自粛もあり,自宅が「おうち居酒屋(巣ごもり居酒屋)」となっている。特に,高齢者ほど重症化しやすいということから,高齢者の自粛が多いようだ。
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おうち居酒屋」では,アルコール類の種類や飲み方,飲酒量も変わっている。飲食店から自宅に移ったとはいえないようだ。コロナ禍(カ)の中,「日本酒」の出荷量を見てみると,2020年2月が前年同月比9%減,3月が12%減,4月が21%減,5月が21%減と激減している。
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そもそも,「日本酒離れ」は今始まった問題ではない。昭和初期に日本全国で 7,000以上もあった「酒蔵」はつぎつぎに廃業し,現在は,1,400程度となってしまった。
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日本酒の消費数量も,1975年をピークに減少を続け,最盛期の1/3まで減少している。
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近年においては,アルコール全消費量も減少している。アルコールの種類が多様化し,安い発泡酒(第三のビール)やリキュール(チューハイ)などが増えているものの,ビールと日本酒は減る一方だ。
▼酒類の消費数量推移。
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特に,「若者のアルコール離れ」が言われる昨今だが,勤め先での「昔ながらの飲みニュケーション」も敬遠され,高齢者の消費量も徐じょに減ってきている。高年齢になるほど,アルコール分解機能も低下する。
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日本酒」の減少は,消費者側の変化だけではない。
酒蔵」側の努力不足というところが大きい。社会情勢が変わっているにもかかわらず,業界全体が変わってこなかったのだ。
▼木屋正酒造の而今(じこん)。
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かつて日本には「日本酒級別制度」があり,アルコール度数に応じて「特級」,「一級」,「二級」の三段階に区分けされていた。
▼高木酒造の十四代(じゅうよんだい)。
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これが酒税と大きく関係していた。戦後,米不足もあり,通常の製法で作られた日本酒に醸造アルコール(食用エタノール)を混合していた。
▼木屋正酒造の而今(じこん)。
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この醸造アルコールの混合率により,「三倍増醸酒(2倍の醸造アルコールを添加)」や「二倍増醸酒(倍の醸造アルコールを添加)」などがある。醸造アルコールは,主にサトウキビの糖に酵母を加えて発酵したあと,蒸溜させてアルコールをつくる。
▼光栄菊酒造の光栄菊(こうえいぎく)。
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コストを要求される「二級酒」ほど,この醸造アルコールの比率が高い。このような製造方法や販売方法が「薄めて水増ししたのが日本酒」というイメージをつくってしまい,日本酒全体のブランド価値を下げてしまった。
▼南陽醸造の花陽浴(はなあび)。
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結果,ほかのアルコール類に市場を奪われてしまった。戦前からの「日本酒級別制度」は,1992年(平成4年)に撤廃され,現在の醸造アルコールの添加は,白米1トンあたり280L以下に制限されている。
▼両関酒造の花邑(はなむら)。
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また,「酒蔵」の「既得権益」の問題も大きい。やる気のある者であっても,「酒蔵」を開設できないのだ。
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新規参入者は,年間6万リットルの最低製造量という垣根があり,国から発行される「清酒製造免許」が取得できない。酒造組合が,「市場の安定を守るための需給調整」という名目で圧力をかけているのだ。
▼高清水の高清水本醸造上撰。
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結果,やる気のある者は海外に出て「酒蔵」を開設し,それを日本や全世界に販売している。
▼輸出金額と輸出量の推移。
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ようやく2019年11月になって重い腰を上げ,新たな規制緩和が発表された。輸出向けであれば,年間数千リットル程度から「酒蔵免許」が取れるようになりそうだ。
▼齋彌酒造店の雪の茅舎(ゆきのぼうしゃ)。
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海外の需要増の背景としては,インバウンド(訪日外国人旅行)効果が大きい。米国,台湾,香港などで「日本酒」が評価され消費量が増えている。今後も,輸出は増える見込みとなっている。
▼1Lあたりの日本酒輸出金額。
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また,国内においても新たな需要として40代から50代の女性の飲酒率が高くなっている。今までは「日本酒」を避けちだったが,ウイスキーを炭酸で割ったハイボールが流行ったように,「日本酒」をを炭酸で割るスパークリングが人気となっている。
▼旭酒造の獺祭(だっさい)。
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また,リンゴやメロン,洋ナシ,マスカット,モモ,バナナなどのフルーティな香を放す「日本酒」が販売されている。
▼相原酒造の雨後の月(うごのつき)。
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精米歩合を高めたお米を,香の発生しやすい酵母を使って,低温長時間発酵させて作っている。各「酒蔵」ごとに,ノウハウがある。
▼小林酒造の鳳凰美田(ほうおうびでん)。
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