JR東日本(東日本旅客鉄道)京葉線の新習志野駅と海浜幕張駅間の 3.4km のほぼ中間点となる「イオンモール幕張新都心」の前に,「幕張新駅(仮名)」を建設する計画がある。
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その「幕張新駅」の建設工事が2020年7月末から始まった。京葉線内の新駅は,1990年に開業した八丁堀駅,越中島駅,潮見駅の3駅以来となる。
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幕張新駅」の計画から建設まで,長い年月が経過してしまった。かつてこの場所は,遠浅の海だった。大きな潮干狩り場や海水浴場があった。東京から大勢の観光客がやってきた。
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1966年(昭和42年)「千葉海浜ニュータウン構想」が立案され,幕張地区の埋め立てが1973年(昭和48年)から始まった。その後,1975年(昭和50年)に「幕張新都心基本計画」が発表され,522.2ha(中心地区 437.7ha+拡大地区 84.5ha)にもなる土地開発のプランが固まった.
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国際展示場(幕張メッセ)を核とした「職-住-学-遊」の複合機能が集積した国際業務都市が描かれていた。そして,日本最大級の国際展示場の幕張メッセが1989年(平成元年)10月9日に完成した。
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だが,「」の早稲田大学誘致に失敗。」は,ロッテマリーンズ(前,毎日大映オリオンズ‎)の誘致には成功したものの,毎回70万人以上を集客する日本最大級の屋内イベントの「コミケ(コミックマーケット)」を「有害図書」を理由に追放。幕張メッセ最大のイベントだった「東京モーターショー」は東京ビッグサイトにさらわれてしまった。
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」は,幕張新都心中心地区は強引にほぼ売り切ったものの,拡大地区はコストコ幕張倉庫店と千葉県警察第一機動隊の施設が誘致できたのみ。「学」の一部を「住」に転用するなど,唯一成功したのは「」のみだった。
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」として,幕張新都心拡大地区には「幕張新駅」予定地を中心に,日本航空(JAL),沖電気工業,オリックス,三井造船,三井物産,三井住友海上火災保険,新日本製鐵,日立ソフトウィア,パナソニック(旧松下電器産業),ソニーなど,世界に誇れる日本企業が手をあげた。
▼初期の計画では,幕張新都心拡大地区にも20階建てクラスの高層オフィスビルが立ち並ぶ予定だった。
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しかし,1991年(平成3年)にバブル景気ははじけ,高騰していた都内の土地価格や家賃は下落した。近くに「」のない幕張新都心拡大地区の価値も下がってしまった。幕張新駅」は,原則「請願駅」扱いとなり,千葉県企業庁,千葉市などが100%負担しなければならない。新規企業の誘致も決まらないなか,国から補助金申請の理由付けもない。
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そんな中,の幕張新都心に本社をおくイオン(AEON)が誘致に手を挙げた。これで,確実な乗客数の見込みの確約はできた。
この時点で「幕張新駅」設置について,千葉県とどのような約束があったのかは不明だが,2013年(平成25年)12月20日にイオンモール幕張新都心はオープンしたが,「幕張新駅」の計画は進まなかった。
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過去に請願駅で誕生した駅を見てみる。武蔵野線内に1998年(平成10年)3月14日に開業した「東松戸駅」は,駅周辺の土地区画整理組合が約40億円を直接負担し,そのうちの約16億円を国と松戸市が土地区画整理組合に対して補填した。
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2008年(平成20年)3月15日開業の武蔵野線「越谷レイクタウン駅」は新駅建設費の約36億円を,地域開発事業者である都市再生機構が18億円,越谷市が18億円を負担した。
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2012年(平成24年)3月17日開業の武蔵野線「吉川美南駅」は,総工費 63.2億円のうちJR東日本が折り返し施設費などに24.6億,吉川市が38.6億円(一部を武蔵野操車場跡地を所有している鉄道運輸機構が補填)を負担している。
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幕張新駅」の場合はどうなったのか。事業主となるはずだった土地所有者である千葉県企業庁は,2015年(平成27年)度を持って解体されてしまった。あまりに長く待たされ待ちきれなくなったイオン(AEON)は,駅舎建設費約130億円の一部を負担すると動いた。
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幕張新駅」の駅舎建設費用の半分の65億をイオンモールが負担,千葉県が約22億,千葉市が約22億,JR東日本が約22億を負担する。JR東日本としては,「戦略的新駅」以外は負担しないという方針を貫いているので異例の負担となる。
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当初,2024年度開業めざす予定だったが,予定よりも1年ほど早い2023年度開業をめざす。2023年10月14日(土)か2024年3月16日(土)のJR東日本のダイヤ改正のタイミングになるのではないかと思われる。
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幕張新駅」は京葉線の既存の線路をそのまま使うため,線路の移設などの工事はない予定で,ホーム構造は2面2線,ホーム長は10両対応の全長約210mとなる。東京方面の上り線のホームが2階,下り線のホームは1階に設置する。
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また,「幕張新駅」の実質上の北口となる「自由通路」も建設する計画だ。「幕張新駅」開業後1年後の予定となる。この「自由通路」の,建設費用に約50億円かかる。
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車両センターをまたぐため,南北全長150m の歩行者専用通路となる。費用負担は継続協議中だが,北口側には千葉運転免許センターがあって千葉県にとっては利便性が上がるが,イオンモールにおいてはほとんどメリットがないため,費用負担はないものと思われる。
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さて,新駅の駅名だが,一般的な地域名を使うと,「幕張豊砂駅」や「幕張芝園駅」,「幕張浜田駅」になるだろうか。だが,いずれも直感的にわかりにくい。
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今回,イオンが建設費用の半分を負担した請願駅となることから,「イオンモール幕張新都心前駅」もありえるかもしれない。同じような請願駅の事例として,「越谷レイクタウン駅」がある。
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