2020年7月2日の未明,関東一円で,「ゴー」といった地鳴りのような謎のごう音(轟音)が鳴り響いた。雨が降っていたところもあり,「雷か?」と思った市民も多かったようだ。
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お台場海浜公園などの24時間ライブカメラや防犯カメラが,満月ほどの光をとらえていた。2020年7月2日(木) 午前2:32 ごろだ。長野の星空ライブカメラや,東京お台場の24時間ライブカメラにも,満月ほどの明るさが記録されている。
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その光の正体は,「火球(明るい流星)」だ。千葉県の京葉エリア,東葛エリア,印旛エリアでも,複数の報告がされている。
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「驚いて目が覚めた」,「地震のように床は揺れないのに,窓ガラスがガタガタガタと揺れた」,「すごい音がして怖かった」,「(ビックリして)ベッドから落ちた」などだ。
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市民の証言から,神奈川東部あたりから千葉北部へ流れっていったことがわかっている。
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火球」のほとんどは大気圏の摩擦によって燃え尽きてしまうが,今回の「火球」は,燃え尽きずに地表に落下した「隕石」だった。千葉県習志野市のマンションの共用廊下で「隕石」が発見された。発見したのはそのマンションの住人で,明るくなってから発見した。
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廊下の手すりにはくぼみがあったことから,一度中庭に落ちて跳ね上がり,手すりにぶつかってから廊下に落ちたものと思われる。
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さらに女性は,同じマンションの中庭にて,別の「隕石」を見つけた。形が先に見つけた「隕石」と一致することから,地面に衝突したときに割れたものとみられる。その後,別の階などからさらに15個ほどの細かい「隕石」と思われる破片が見つかった。
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1つめの「隕石」は,直径が約 4.5cm,重さ 63g。2つめは,直径がおよそ5cm、重さ 70g だった。マンション名は公表されていないが,推定軌道から落下地は習志野市の「ユトリシア(旧川鉄跡地)」あたりではないかと思われる。隕石」は「習志野隕石(仮称)」と命名され,国際隕石学会に登録申請する。
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その後,1km ほど離れた船橋市内にあるアパートの敷地でも見つかっている。
アパートの瓦が割れて落ちていたことから,屋根に落下して瓦の破片とともに落ちたとみられる。船橋市でも発見されているが,最初に発見された地の郵便番号区画地名から命名されるルールとなっている。2018年の「小牧隕石」以来で,国内53例目となる。
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各地の「火球」の目撃情報から,落下軌道が推定されている。大阪あたりから関東へ角度約40度程度で落下し,大気圏の摩擦の高熱で神奈川県平塚市上空で爆発して分割し,習志野地区へ向かった。
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隕石」の一部は誇大な陸上自衛隊習志野演習場や八千代市の畑,墓地あたりにも落ちているのではなかと思われる。
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小惑星の地球接近天体(NEO)は,地球衝突を事前に早期発見する(スペースガード)ため,長野県のJAXA入笠山光学観測所とオーストラリアのJAXAサイディングスプリング観測所などの日本スペースガード協会(JSGA)で監視をしている。また,米国ではカリフォルニア州パサデナの米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)が監視をしている。今回の「隕石」が,事前の通告となっていなかったことから,大きさは 1m 以下のノーマークの小惑星だったのではないかと言われている。
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2013年2月15日,ロシアのチェリャビンスクに衝突した「チェリャビンスク隕石」は 17m で,多くの建物が被害を受け約1500人が負傷した。
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小惑星が地球に衝突して大打撃を与えた例として記録に残るのは,ロシアのシベリアに落下た「カハルルィーク隕石」がある。ロシア革命前の1908年で,直径約 60m,重量1.886kg 規模の小惑星だったが,落下中大気で大爆発をし,直径約 60km - 100km にわたって森林が炎上している。
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