今から35年前の1981年(昭和56年)4月,千葉県船橋市の船橋ヘルスセンター跡地に,ららぽーと船橋ショッピングセンター(現,ららぽーとTOKYO-BAY)が誕生した. 当時,日本最大規模の郊外型ショッピングセンターだった.
1957年_昭和32年_船橋市浜町2_船橋ヘルスセンター_0101962年_昭和37年_船橋ヘルスセンター_空から見た全景_15244
このららぽーと船橋ショッピングセンターがオープンした時,地震を疑似体験できる地震体験館という施設が設置された. 分化施設として企画された施設のひとつで,ここで巨大地震を体験すると,「地震体験証明書」を発行する. 現在,同様の施設は東京臨海広域防災公園内の防災体験学習施設「東京直下72h TOUR」をはじめ,全国に19カ所以上もある. ららぽーとの施設は,先駆的取り組みだったといえる. 当時は,一般市民が地震を体験できる施設はほとんどなく,貴重な施設だった.
千葉県船橋市浜町にあった船橋ヘルスセンター.
20060202_1225_船橋ヘルスセンター_航空写真_01220060202_1225_船橋ヘルスセンター_航空写真_020
1971年(昭和46年)2月26日に新潟県上越地方で発生した新潟県南西部の地震(M5.5,最大震度4,死傷者13人). 1974年(昭和49年)5月9日に発生した伊豆半島沖地震(M6.9,最大震度5,死者30人). 1978年(昭和53年)6月12日に発生した宮城県沖地震(M7.4),最大震度5,津波あり,死者28人). 1980年(昭和55年)9月25日に発生した千葉県北西部の地震(M6.1,最大震度4,死者2人)などと,大きな地震が発生していたことから地震体験館の設置になったものと思われる. 当時の振動装置は,左右の横揺れのみで,縦揺れ(上下)は実現できていなかった.
1987年_昭和62年_船橋市浜町2_ららぽーと航空写真_0121991年_平成03年_船橋市_DSC0855220
震災時には,一瞬の判断が生死を分けることがある. 瞬時に適切な判断をするためには経験や知識が必要となる. 特に高齢者は地震直後に茫然自失(ぼうぜんじしつ)となり,何も行動できなくなってしまう場合がある. 身をもって体験すれば,いざというときに役に立つ. 北日本に住むほとんどの人は,2011年の東北地方太平洋沖地震を体験している. だが,人は嫌なこと,苦しい こと,つらいことは忘れるように進化している. たえず「自分の命は自分でまもる」ことを考えて入れば,自然に体が動くはずだ.
富山県富山市四季防災館の地震体験施設.
2012年_富山県富山市四季防災館_地震体験_11220130305_富山県富山市四季防災館_地震体験_1441_112
1995年1月17日午前 5:46 に淡路島北部の明石海峡を震源として発生したM7.3の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)は,近代的な観測が始まってから初めての大都市で発生した直下型地震だった. 窒息死 1967名(全体比率 53.9%),圧死 452名(12.4%)が多く,これに内臓損傷や全身打撲などの圧迫による死亡を加えると,合計2768名(76%)にもなった. 体が入る空間が確保されていれば,つぶれた家屋に取り残されても数時間から1日ほどで助けが来るはずだ.
20150913_船橋市_防災_地震体験車_起震車_0905_DSC07915t20150913_船橋市_防災_地震体験車_起震車_0905_DSC07916t
耐震対策ずみの団地やマンションの中高層集合住宅では,震度6強でも耐えられるようにできている. おそらく,震度7でも倒壊まではならないだろう. マンションなどの集合住宅の場合,建物の損壊が激しくなくても玄関ドアの鉄ワクが変形して居住者が屋内に閉じ込められることが多数発生する. その時のために,廊下側のアルミ製の窓格子を外すような工具も用意しておいた方がよいだろう.
20160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_0921_DSC07425t20160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_0934_DSC07428t
日本の場合,震度7クラスの巨大地震が必ず襲いかかる. だが,それが明日なのか30年後なのか,東京圏なのか,千葉県沖なのか,南海なのかがわからない. いざという時のために,日ごろの準備が重要となる. 2011年の東北地方太平洋沖地震から6年になろうとしている. 一般的に3歳以前は記憶として残りにくい. 小学2年の児童(8歳)もこの地震を経験しているはずだが,すでに幼児期記憶から消えている.
20160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_0950_DSC07438t20170226_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1010_DSC01062
このような小学低学年児童でも,巨大地震を疑似体験できる地震体験車(起震車)を,都市部の自治体が導入している. 千葉県の場合,千葉県の地震体験車「まもるくん」や,船橋市の「なまず号」をはじめ,市川市,松戸市,柏市,流山市,千葉市,市原市で保有する. 近接する都県でも,神奈川県 10台,埼玉県 8台,東京都 2台,栃木県 1台などとなっている.
20170226_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1025_DSC01088t20170226_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1024_DSC01084
船橋市の地震体験車「なまず号」は,今から37年前の1979年(昭和54)8月20日に初めて導入された. おそらく,1974年(昭和49年)5月9日に発生した伊豆半島沖地震(M6.9,最大震度5,死者30人)と,1978年(昭和53年)6月12日に発生した宮城県沖地震(M7.4,最大震度5,津波あり,死者28人)がきっかけだったのだろう.
20160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1025_DSC0749020170226_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1018_DSC01068
そして,2013年度(平成25年度)の予算で新しい地震体験車「なまず号」に更新され,2014年1月25日(土)に開催された「防災フェアふなばし」で初めて一般公開された. 今回で地震体験車で,4代目の「なまず号」となる. 最新型の地震体験車「なまず号」は,前後左右(2D)の2軸に新たに上下運動が加えられた3軸(3D)で振動(揺れ)させ,震度1から震度7まで地震を再現することができる. さらに,「ねじれ」運動を加えた4軸(4D)の地震体験車もある.
20160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1024_DSC0748120160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1024_DSC07482
この新しい機能によって,2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の揺れだけでなく,1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災),さらには1923年(大正12年)の大正関東地震(関東大震災)などと,過去の大地震をリアルに再現し,体験することができる. この最新型の地震体験車「なまず号」には,もうひとつの役割がある...
.
有事の際には,地震体験車「なまず号」発電機として使えるのだ.
20160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1025_DSC0748920170226_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1018_DSC01069
地震体験車「なまず号」には,2台の発電機とLED投灯器が搭載され,災害時には避難所などで夜間照明機としても活用できる. また,安否確認をする方法として,携帯電話やスマートフォンは重要だ. だが,最近のスマートフォンは半日から1日ほどでバッテリー切れとなってしまう. 地震直後は,電柱の傾きなどによってかなり広範囲で停電となるだろう.
20160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1025_DSC0748520160228_船橋市_防災_地震体験車_起震車_1024_DSC07482T
乾電池を使った充電器も数時間でなくなる. そのような停電地域へこの地震体験車「なまず号」を持ち込み,個人の携帯電話やスマートフォン,モバイルバッテリーなども充電できる. 地震体験車「なまず号」の貸し出しは,月曜日から金曜日の平日と日曜日(ただし,祝日は除く)となるが,土曜日と祝日は運用していない. 午前 10:00-12:00 と午後 13:30-16:00が選べる. 防災イベントや地域の防災訓練などで予約が満杯という状況となっている. では,この地震体験車「なまず号」の価格はいくらするのだろうか.
20161105_1410_スマートフォン_バッテリー_DSC0007620161105_1413_スマートフォン_バッテリー_DSC00884T
船橋市の地震体験車「なまず号」の場合,車両はいすゞのトラックをベースに改造している. 船橋市落札金額の告知は見つけられなかったが,東京都福生市の場合では,車両金額が621万9210円,搭載した起震装置は19,425,000円で合計2564万4210円となっている. 約 3/4 が起震装置関係の価格ということになる. 高額なことから,東京都昭島市と立川市は共同で地震体験車を導入している.
20160229_スマートフォン_バッテリー_18220160229_スマートフォン_バッテリー_142
.
人気ブログランキングへ
<関連記事>
(2016年11月12日)災害は防げるのか@災害用マンホールトイレ(46)
(2016年11月12日)災害は防げるのか@緊急消防援助隊と災害時対策用重機(45)
(2016年11月06日)災害は防げるのか@「津波てんでんこ」などの言い伝えと東日本大震災の津波の被害(44)
(2016年10月25日)災害は防げるのか@市川の「八幡の藪知らず」の伝説の謎(43)
(2016年10月01日)災害は防げるのか@JR京葉線東京駅階段のカロリー表記(42)
(2016年10月01日)災害は防げるのか@京成本線船橋競馬場駅の耐震化工事(41)
(2016年09月26日)災害は防げるのか@横浜の傾斜マンション問題と習志野市市役所庁舎の建設(40)
(2016年09月05日)災害は防げるのか@習志野市市役所庁舎の建て替え(39)
(2016年04月21日)災害は防げるのか@熊本地震への陸上自衛隊第6師団の災害派遣(38)
(2016年04月20日)災害は防げるのか@船橋市の南海トラフ巨大地震を前提とした津波避難誘導看板の設置(37)