2016年8月1日(月) 17:09,「東京湾を震源とするM9.1の地震が発生」という緊急地震速報が流れた.
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緊急地震速報(略称,EEW)は,地震の震源に近い観測点の地震波(P波)から震源の位置や地震の規模を推定し,これから揺れが伝わる各地の震度や到達時刻を推定するシステムとなっている.
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地震がくる前に数十秒の猶予があれば,近くの公園へ移動したり,木造住宅の1階から2階へ移動するなど避難行動がおこなえる. 地震が多い日本独自のシステムで,世界初となる. 気象庁が中心となって2007年10月1日から正式運用を始めている.
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陸地から離れたところで発生する海溝型地震であれば数十秒の余裕があるが,陸地を震源とする直下型地震では数秒しか余裕がないため,事前の緊急地震速報は間に合わない.
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できるだけ早く情報を出さないといけないため,少ない情報(地震計)で震源地や地震の大きさを特定しなければならない. そのため,誤報のリスクもゼロではない.
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推定震度5弱以上のときに発表されテレビ放送や携帯端末などに地震動警報(推定最大震度5弱以上)や地震動特別警報(推定最大震度6弱以上)を伝える. 東北地方太平洋沖地震のあった2013年度は 63%の的中率,2015年度は 86% となっている.
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関東圏の場合,過去の大地震の記録から 80年-100年という周期性があることがわかっている. 前回の大正関東地震が起こった1923年(大正12年)9月1日に南関東を中心に発生した. それから 93年の月日が経っていて,いつ起こってもおかしくない状況となっている.
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2016年8月1日(月) 17:09 の「東京湾を震源とするM9.1の地震が発生」も,ほぼ本州全体におよぶ地震動特別警報だった. 民放ではすぐに緊急地震速報が流れたが,なぜかNHKなどの一部の放送局では流れていない. 途方もない緊急地震速報のデータに,独自の判断で様子をみたのかもしれない. 受信した関東地方の交通機関は一斉に緊急停止をした. だが,予定時刻を過ぎても地震はこなかった. その後,すぐに「キャンセル報」が出され地震動特別警報は取り消された. 誤報だったのだ.
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緊急地震速報の性質上,誤報はある程度リスクとして見込まれている. だが,これほど大規模な誤報は初めてのことだ. では,どうして大規模な誤報が出てしまったのだろうか....
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原因は,千葉県富津市の鋸山観測所(東京大学地震研究所管轄)に設置していた地震計(加速度センサー)の出力する観測データに急激な変化が生じたためだった. ただし,地震計がどうして急激な観測データを出力してしまったのかについては,調べることは技術的に困難となっている.
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その仮説として落雷によるノイズではないかといわれている. 関東圏全域でとなるような天気ではなかったが,唯一千葉県富津市だけは局所的にとなっていた.
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観測地に給電している電柱などに落雷があると,電線や地面を伝わって瞬間的に高電圧が発生する雷サージ現象が発生することがある. 保護装置が付いているので電子機器が壊れることはないが,で起きたノイズを拾って誤って地震として出力してしまった可能性がある.
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このような雷ノイズは想定内のはずで,たとえ1カ所の観測所が誤ったデータを出力したとしても2カ所以上のデータと比較して異常データははじくしくみになっているはずだ. おそらく,同じ時間帯に別の観測地点からもたまたま誤ったデータが出力された可能性もある. 気象庁は,ソフトウェアの改善を予定している.
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