JR成田駅.京成成田駅から徒歩15分程度(約800m)の場所にある大本山成田山新勝寺(真言宗智山派)は,昔から「成田のお不動さま」として親しまれ信仰されてきた.
明治初期(1872年ごろ)の成田山新勝寺付近.
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江戸時代には,同じ成田山信仰している人びとが組織され,江戸のみならず関東一円から成田講(なりたこう)という団体単位で旅をしていた. 例えば,村の仲間が少しづづお金を出し合って旅費をつくり,くじ引きをして当選した人が代表者として参拝にいく. 代表者は,村人全員の祈願をし,お札やお守りをおみやげとして持ち帰るシステムとなっていた. 江戸時代当時,成田詣は一大ブームとなっていて,日本のメッカ巡礼のような存在だった.
1974年(昭和49年)ごろの成田山新勝寺付近.
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成田山表参道(門前町)には,多くの土産物屋や飯屋,旅籠屋(旅館)が立ちんでいた. 「成田山の団子」などが名物化していた. 特に,疲れた旅人たちのパワーとなったのがウナギ(鰻). 当時の利根川や印旗沼はウナギの産地で,入手しやすかったという背景がある. 濃厚なタレにつけて焼く香ばしい匂いは,旅人の食欲がそそられたに違いない. 今でも,「成田のウナギ」として60軒もの有名なウナギ屋が営業している.
1979年(昭和54年)ごろの成田山新勝寺付近.
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江戸時代の旅人が1日に歩けた距離は,平坦な道で「男十里,女九里」といわれていた. 江戸からの成田詣は十七里(67km)であったが,旅になれていなかった人びとも多かったため,一般的な行程は往復3泊4日,なれた人で2泊3日であった.
1984年(昭和59年)ごろの成田山新勝寺付近.
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往復3泊4日の場合の途中の宿泊先は船橋宿,2泊3日の場合は佐倉宿を使うことが多かった. 特に船橋宿の場合,新鮮な魚介類を提供することから人気だったようだ.
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このような参拝客を目当てに鉄道が開通することによって状況が一変する. 最初に開通したのは,1883年(明治16年)に東京-成田山間に開業した乗り合い馬車だ. 所要時間は大幅に短縮されたものの,片道8時間もかかっていた. また,雨が降ると割り増し料金が徴集された.
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日清戦争(1894年7月)直前の1894年(明治27年)7月に,総武鉄道の市川駅-佐倉駅間が開業. 当時の所要時間は,1時間30分(現在は最短38分)を要した. 12月には本所駅(現,錦糸町駅)まで延伸される. そして,1897年(明治30年)1月に路面電車の成宗電気軌道(後に成田電気軌道,千葉交通の前身)として佐倉駅-成田駅間が開業する. 1897年(明治30年)1月,成田鉄道の佐倉駅-成田駅(現,JR成田駅)間が開業する.
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さらに,1901年(明治34年)に成田駅-我孫子駅(あびこえき)間が開通し,上野から我孫子を経由して成田までつながる. 当時の所要時間は約2時間だった.
JR成田駅東口前再開発事業.
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一方,1909年(明治42年)6月に京成電気軌道株式会社(現,京成電鉄)が設立される. 1926年(大正15年)12月に津田沼駅-成田花咲町駅(現在の京成公津の杜近く)間を開業する. 成田山新勝寺の門前に駅を設置する計画だったが,参拝客が通らなくなって門前商店街が衰退することを恐れて猛反発され,現在の位置に京成成田駅を1930年(昭和5年)4月に開業する.
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2015年東京・首都圏エリア神社仏閣初詣参拝者数(正月3が日)ランキングでは,1位;明治神宮(約310万人)につぐ,2位が成田山新勝寺(約305万人)で,今でも人気がある...
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このようにして,JR成田駅京成成田駅は,徒歩5分,400mほどの距離の場所に駅が設置されている. 成田国際空港が開港された後,海外からのインバウンド(訪日外国人旅行)が多くなっている. 日本は,東京オリンピックが開催される2020年までには,インバウンド(訪日外国人旅行)者数を2000万人にする計画を描いている. 千葉県内の観光地としては,東京ディズニーリゾートが第1位,それにについ成田山新勝寺が第2位となっているが,これらの観光地が期待される.
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成田国際空港は日本の玄関口という機能の他に,アジア圏の国際ハブ空港(乗り継ぎ空港)の機能もある. 本来ならば,出発地と目的地が直行便で結ばれていることが,旅客にとって一番都合がよい.
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しかし,直行便がない,長距離飛行ができない,飛行場の滑走路の長さが短い,需要が少ないなどの理由から,どうしても飛行機の乗り継ぎが発生する. 国際ハブ空港を経由しないと目的地までいけない航路が多数ある. 日本はアジアの中でも最も東端に位置しているので,大陸間を移動する長距離路線の玄関口のゲートウェイ空港に適している.
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日本のトランジット旅客の99%以上が,成田,関西,中部の3空港のいずれかを利用している. だが,せっかく日本に来ていながら,出国手続きすることなく空港からまったく出ることがない. 成田国際空港の場合,韓国や中国から北米への乗り継ぎ客が多い. このようなトランジット旅客(国際線通過旅客/乗換旅客)の時間的ロスを利用して,いかにインバウンド旅客に引き込むかが課題となっている.
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乗り継ぎ時間の調整のため,場合によっては半日,時には翌日になる場合もある. もともとは,乗り継ぎ目的で日本にきているためあまり遠くへは行けないが,成田国際飛行場から近い成田山新勝寺の場所であれば十分行ける. 滞在時間は短いが,ウナギの食事くらいはできるだろう.
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このように観光価値の高い成田山新勝寺だが,JR成田駅東口と京成成田駅の間の中央口地区約 5.0ha の再開発を進めている. 国際空港がある成田市の表玄関となる場所だが,歩行者や自動車の動線がさくそうし,日本の交通事情に慣れていない外国人には危険な場所もあった. 成田市は,2007年2月に長期的なマスタープラン「成田市都市再開発の方針」を定めて,計画的な再開発を進めていた.
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この中央口地区のうちJR成田駅東口地区の約1.4haについて,第二種市街地再開発事業に2009年9月に決定. 2010年に事業を開始し,2014年度にはスカイタウン成田(A棟)と千葉交通駅前ビル(B棟),JR成田駅東口駅前広場の一部が完成. さらに,JR成田駅東口駅前広場の工事が2016年3月に完成し,JR成田駅東口第二種市街地再開発事業が全体が完了した.
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この再開発により,駅前広場の面積はこれまでの2倍以上の約6800m2へと広がり,バスややタクシー待ちの長い列も安全に保たれる. また,表参道並びに京成成田駅へのスムーズな歩行者動線が確保できた. だが,再開発ビルの商業施設のテナントについては,いまだに半数近くが空室となっている.
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今後は,京成成田駅西口地区再開発事業約 2.2ha に入る予定だが,まだ基礎調査の段階で,都市開発プランや事業化のスケジュールなどは決まっていない.
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