船橋市の松戸徹市長と千葉県の平井俊行総務部長が厳しい顔つきで席についた. そして,平井俊行総務部長は重い口を開いた「2015年度末で船橋オートレース場を廃止する」と. 2014年8月12日(火)におこなわれた船橋市千葉県の突然の合同会見だった. 「事業継続の場合,建物のスタンド耐震化や走路改修など大規模な設備投資が必要なこと」などを廃止(撤退)理由としている.
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実は,これよりも8日前の8月4日(月),オートレースの最高意思決定機関「小型自動車競走運営協議会(JKA)が東京都内で開催されて,船橋オートレース場の廃止が討議される」との情報がオートレース関係者からリークがあったことから,オートレースファンからは「やはり,ダメだったのか」との落胆の声が出ていた.
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さらに2004年9月11日にも,「船橋市がオートレース事業から撤退する方針を固めた」とするとの報道がサンケイ新聞からスクープされている. この報道に対して当時の旧藤代孝七船橋市長は,「現在船橋市ではオートレース事業の収支改善のために計画に基づいて鋭意努力をつづけているところであり,撤退する方針を固めたという事実は一切ない」と,抗議文を出している. 閉鎖した場合の従業員の退職金算定など,具体的な費用の算定作業を「極秘」でおこなっていたが,その情報が漏れてしまったようだ.
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それまでも,船橋オートレース場の廃止問題は何度となく噂にはなっていた. 2004年の廃止に関する記事も,2003年度(平成15年度)に千葉県の包括外部監査人が出した「船橋オートレース事業の財務事務執行」のレポートが発端となっていると思われる. 包括外部監査人の代表は,公認会計士の藤代政夫(現,千葉県議会議員ふじしろ政夫)だが,実際にレポートをまとめたのはトーマスコンサルティングとなる.
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このレポートでは,いくつかの問題点を指摘している. そのひとつが,同じ千葉県開催(松戸市主催)の松戸競輪事業船橋オートレース事業の会計がダンゴ状態の会計になっていることだった. それぞれの事業が,千葉県の一般会計に繰り入れられていれば明朗な会計ではあるが,実態は松戸競輪事業の黒字が船橋オートレース事業の赤字に充てられている状態(実質上税金で補てんしている状態)になっていて,船橋オートレース事業の赤字が千葉県民に見えにくい状態になっていた.
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またレポートでは,「千葉県の一般会計への繰り出しが長期的にできなければ,(共同開催者である)船橋市などと協議を行い,船橋オートレース事業からの撤退をすべし」と提言している. この時の調査内容をサンケイ新聞記者が記事にしたものと思われる.
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だが,廃止決定寸前の船橋オートレース場に助け舟を出したのが,競艇(ボート)の生みの親笹川良一の息子笹川尭が設立した日本トーター(現在は,孫にあたる笹川博義)だった. 日本トーターは,包括的民営委託方式を提案し,たとえ船橋オートレース事業が赤字が続いたとしても,運営母体となる船橋市や千葉県は必ず黒字になるという「夢」のような提案(契約)であった.
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また,日本トーターは,ボートピア習志野の運営も包括民間委託していて,競馬競技を除く公営競技の実質上の独占を狙っている. ボートピア習志野は,東洋エンジニアリングの不動産子会社であるテックエステートが運営母体にはなってはいる. 不動産会社に運営ができるはずもなく,日本トーターが事実上の経営者となる.
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そのような「夢」のような経営が長続きするはずもない. 日本トーターは事業の赤字を吸収するばかりか,主催者を黒字にするために年間4000万円をも船橋市などに納金しなければならない. 結局,日本トーターは2013年度末での契約更新をせず,船橋オートレース事業にかかわらないことを決断した. 船橋オートレースだけでなく,オートレースそのものを見捨てたのかもしれない.
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日本トーターの撤退にともない,2014年度からの運営受託者を公募したが,当然応募はゼロだった.
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しかたがなく後を引き継いだのが,競輪などの公営競技の写真判定を専門におこなう日本写真判定(株)だった. 当然ながら,千葉県も船橋市も,委託先である日本写真判定も赤字負担は負わない,赤字は,オート業界団体が負担するという日本トーターとは違った条件での契約だった. 日本写真判定は,2013年度から千葉競輪場の開催業務も受託していて,千葉県との関係は深い.
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2014年度の運営実績も,おおかたの予想通り日本写真判定になっても経営の立て直しはできず赤字のままだった. そもそも日本写真判定には,日本トーターほどの公営競技の経営能力はなく,船橋オートレース事業廃止までのつなぎだったのかもしれない.
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船橋オートレース場の土地は三井不動産,建物などの施設はよみうりランドが所有している. 一部富士通が開発した投票システムの無形資産を三井不動産日本トータが持っている. 賃貸料として三井不動産に 1.175%(年間約2億円),施設利用料や常駐社員の給料,総務,人事,経理,財務管理費用としてよみうりランドに 3.625%(年間約7億円)が支払われている. いずれも固定額ではなく,売上に連動するしくみとなる. 船橋オートレース事業の経費削減のため,にさらに値引きを要求していた. オートファンの間では,「三井不動産がこの値引きを拒否,土地を返してほしい」と言われたという説がある.
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三井不動産は,船橋オートレース場となりのケンズテニスクラブららぽーと(船橋ヘルスセンターの巨大ゴールデンビーチ跡地)に,巨大物流施設のMFLP船橋Iを建設中で,インターネット通販の仕分けなどをおこなう予定だ. 船橋オートレース場の跡地は,ほぼ同じサイズのMFLP船橋Ⅱが建てられるほどの広さがある.
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船橋オートレース場は,1950年に全国で初めて設置されたオートレース発祥の地だ. 千葉県と船橋市の車券売上額は,1990年度に約744億円を記録したが,その後下降に転じ最近は86%減の約103億円まで落ち込んでいた. また入場者も,1992年度に過去最多の113万人を記録したが,最近は約15万4000人にまで減少している. 船橋オートレース事業で過去約400億円(千葉県187億円,船橋市197億円)の財政貢献をしている.
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日本の公営競技は,国の特殊法人が運営する中央競馬を除いて,オートレース,競輪,競艇,地方競馬と,地方自治体が主催している. どの公営競技も売上減少傾向にあったが,ここ数年の競艇,中央競馬,地方競馬は増加方向に転じている. だが,オートレースだけは年間売上高は,約680億円(2013年度)と公営競技の中でいちばん少ない.
2013年_公営競技売上金額推移_122
オートレース場は,船橋のほか川口(埼玉県),伊勢崎(群馬県),浜松(浜松市),山陽(山口県),飯塚(福岡県)と,他の公営競技に比べて非常に少ない. ひとつのオートレース場あたりの平均売上高は約110億円と最も低い. だが,競輪の約140億円と比べても極端に差があるわけではない. このことから,売上を伸ばすきっかけを見つけることができれば,他の公営競技に肩を並べる程度には復活できたのかもしれない.
2013年_オートレース車券売上金額推移_1122013年_競輪車券売上金額推移_112
また,入場者1人あたりの1日平均購入額(2012年度)は,競艇が約2万円といちばん高く,中央競馬の約1万5000円に対して,オートレースは1万3000円を下回っている. このように,オートレースは他の公営競技と比較しても,売上高および平均購入額が低い. さらに,入場者の高齢化のために,減少傾向にも歯止めがかかっていない. また,女性客などの新しい開拓もできていない. まいまだにホームグラウンド制を採用している古い制度にも課題がある.
2014年_オートレース場・場外車券売場の所在地_1122012年_オートレース施行者の営業活動収支_112
オートレースも,ナイター経営ができれば,仕事帰りのサラリーマンの新規開拓もできたであろうが,オートレース特有の爆音のためにそれもできない. 環境省の騒音環境基準では,商業,工業地域の昼間で60デシベル以下,夜間で 50デシベル以下にしなければならない. すでに,昼間の環境基準でさえクリアできていない. ようやく電動バイクレースの検討も始まったが,爆音にこだわり過ぎて開発が遅れ,もはや手遅れと言うファンもいる.
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