日本の代表的なファストフードチェーンの牛丼御三家といえば,吉野家ホールディングス(HD)の吉野家,ゼンショーホールディングスのすき家,松屋フーズの松屋の3社だ.
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今,牛丼チェーン業界は,マーケットシェアを拡大しようと激しい価格競争を繰りひろげ,熾烈(しれつ)な争いをおこなっている.
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ここ数年で牛丼チェーンの勢力図は大きく変化し,すき家が1913店,吉野家が 1192店,松屋が1043店と,すき家が老舗吉野家を抜き店舗数でトップに躍り出ているばかりか,松屋にも追い抜かれるかもしれない.
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『よく行く牛丼チェーン』5000人男女アンケート(ソフトブレーンフィールド調べ)の女性では,1位:すき家(44%),2位:吉野家(35%),3位:松屋(11%),4位:なか卯(8%)となった. 男性では,1位:吉野家(43%),2位:すき家(31%),3位:松屋(20%),4位:なか卯(4%)となっている.
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また,牛丼チェーンに行かない人の割合は,女性 50%,男性 25%だった. 年代別では,30歳代以下ではすき家が1位だが, 40歳代以上では吉野家が1位となる.
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だが,大手牛丼チェーンすき家が各地で閉店となっている. ただし,完全閉店というわけではなく一時閉店なのだ. しかも,事前に告知もなくいきなり閉店している事例が多い.
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共通しているのは,店舗前には謎の「お客様の満足のため,パワーアップ工事中」という掲示がされていることで, 近所からは「すき家さんは,いったいどんなパワーアップをするのか」といった期待の声も出ていた.
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公式な発表はないが,閉店している店舗は大都市圏を中心に 100店を越える数になっているようだ. いったい,どのような「パワーアップ」なのか,店舗の大規模改装なのか,メニューの変更による厨房の変更なのか,イスの変更なのか,謎は謎をよび話題となっていた.
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だが,いつまで待てど,開店予定期日を過ぎても再開店するようすもない. 外からうかがう限りでは,店舗内の大規模な改装をしているようすもない. 人影もない. パワーアップとはほど遠い.
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すき家の謎の閉店の事の発端は,吉野家の鍋メニューの牛すき鍋膳に始まる. 牛すき鍋膳は, 安さを売りにしてきた牛丼チェーンにおいて,安売りからの脱却をはかり高価格路線を模索した結果の戦略的新メニューだ.
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牛丼チェーンの吉野家は,2013年12月5日から牛すき鍋膳の提供を始めた. 価格は並盛り580円,大盛り680円で,定番メニューの中では最高価格となる.
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固形燃料入りの卓上こんろにをのせて提供し,熱いまま最後まで食べられるのが売りだ. 今までの牛丼チェーン店は『うまい,やすい,はやい』だったが,この新メニューはあえて『うまい,たかい,ゆっくり』の路線に変更している.
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吉野家は,すき家にくらべてファミリー層や女性層に弱いといわれていた. それらの客層の開拓をおこなうのが目的だった. ただし,通常の牛丼並盛の店舗滞在時間が 7-8分だったが,牛すき鍋膳の場合 15分-20分となり,回転率がかなり悪くなる.
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この牛すき鍋膳がヒットし,客数が増え売り上げが増加した. 2014年2月期決算では,売上高が前年比 5.4%増の1734億円で4年ぶりの増収,純損益は6億円の黒字で2年ぶりに黒字に回復した.
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これを他の牛丼チェーンが見逃すはずもない. ゼンショーHDのすき家は,対抗メニューとして牛すき鍋定食を2014年2月14日から全国での販売を開始した.
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メニューの名前は違うものの,吉野家のあつあつ鍋のコンセプトはまったく同じものだ. 味は,少し甘めでこってりしたタレが特徴となっている. 価格も,吉野家と同じ580円とした.
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さらにすき家は,とろ~りチーズカレー鍋定食(650円),野菜たっぷり牛ちり鍋定食(650円)のメニューも追加した. 野菜たっぷり牛ちり鍋定食は多めの野菜とともにおろしポン酢で食べる. 男性だけでなく女性にも子どもにも受け入れられるすき家らしい完璧なメニューだ.
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もともと,すき家の名前はすき焼きに由来し,創業間もない1983年と2004年にも販売していたことがある. 意地でも『牛すき鍋はこちらが本家』とアピールしたかたのだ. すき家の鍋メニューの客の評価はまずまずだった. だが,これが裏目に出てしまった. それはなぜなのか...
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はとにかく手間がかかるのだ. それを作るのは従業員だ.
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従業員といっても,職が安定しない非正規社員(アルバイト)ばかりだ. 手が回らなくなり,を出す時間は長くなるばかりか,調理のほとんどいらない牛丼を出す時間にまで影響した. 固形燃料は約15分間燃え,食べ終わるまでを温め続ける. だが,早く食べ終えてもそれを簡単にかたずけることができない.
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時間がない店員の作業はますます遅れ,食器洗浄の質も下がり,たまごがこびりついていたという報告も多数報告されている. 特に,お昼のサラリーマンは1時間で職場に戻らないといけないという時間的制がもある. 客には「遅い」とどなられ,クタクタになってアルバイトを終えるという毎日が続く.
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すき家に愛着心のない非正規社員(アルバイト)は,多少時間単価が下がっても楽な条件の良い店に移ってしまう. 食材と違って人材の補充は簡単ではない. もともと,ギリギリの人員でローティションをしているため,1人抜けても大変なことになる.
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1人抜け,2人抜け,勤務ローテーションは回らなくなってくる. 夜間営業はワンオペ(ワンオペレーション/1人営業)はざらとなる. ワンオペは,食事すら満足にできないばかりか,トイレにすら抜けられないことが多い. 低時間単価以上にアルバイトがもっとも嫌がる仕事形態だ.
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また,監視カメラまでケチったことから,都内で売上金強盗が多発し,『強盗が一番入りやすい店』などの噂も定着化してしまった.
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こんな過酷な状況がネットに書かれ,どんどんブラック化していった. それですき家が閉店しようが,ゼンショーが潰れようが,非正規社員(アルバイト)には関係ない話なのだ. いまどきの学生アルバイトは,仕事先を決める場合に必ずネットで調べる. 少しでも楽で時間単価の高いところへ流れてしまう. 結局,すき家にはアルバイトがよりつかなくなってしまった. いくら募集しても,集まらないのだ.
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時間単価を極端に上げれば,なんとか人材も集まるだろうが,ギリギリで経営している牛丼チェーン店はそれが難しい. 時間単価を上げると商品単価も上げないといけないといけなくなり,価格競争力が落ちてしまう. 結果シェアを落とすことになる.
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閉店する店が多発しても,意地でも『牛すき鍋はこちらが本家』と固執していたすき家だったが,結局消費税増税を言い訳に2014年4月1日(火) 9:00をもって鍋メニューは完全中止とした. 実質上,吉野家の大勝利となった. もうそろそろ,非正規社員(アルバイト)の扱いを考えるべきなのかもしれない.
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