静かな喫茶店で,くつろぎながら飲むコーヒー(カフェ)の味は格別だ. そのコーヒーが日本に初めて輸入されたのは1877年(明治10年)とされる. その後,1888年(明治21年)には,コーヒーを飲ませる日本初の喫茶店が東京上野(現,台東区上野1)ににオープンする. 当時は,ビリヤードなどの遊戯具も備えた社交場のひとつだった.
東京都台東区上野1丁目の日本最初の喫茶店(喫茶店発祥の地).
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喫茶店カフェ店の事業所数(総務省統計局調査)は,1981年(昭和56年)に15万4630事業所もあった. 当時は個人経営の喫茶店が多く,法人経営のチェーン店はそれほど多くなかった. この年をピークに事業所数は減り続け,2014年(平成26年)は 6万9983事業所と,33年間で 54.7% も減ってしまった.
喫茶店営業施設数の推移(左). 個人経営と法人経営別喫茶店の割合(右).
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喫茶店営業施設数(厚生省統計情報部調査)で見ると,2006年(平成18年)が 29万3402施設であったが,2014年(平成26年)には 22万8720施設と 22.0% 減っている. 従業員数も,2014年に 57.6万人だったが,2014年(平成26年)には 33.9万人へと 41.1% も減少している. 減少した店舗のほとんどが,個人経営となる.
市川市八幡2丁目にあった「喫茶ルノアール本八幡」.
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総務省統計局では,「喫茶店」を「主としてコーヒー,紅茶,清涼飲料などの飲料や簡易な食事などをその場所で飲食させる事業所」と定義している. 喫茶店個人経営法人経営(チェーン店など)の割合(2014年)は,個人経営は約 5万3000事業所(75.8%),法人経営は約 1万7000事業所(24.0%)となっている.
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スターバックスコーヒー」(1334店)や「ドトールコーヒーショップ」(1124店)など,大手チェーン店のセルフサービス型喫茶店が増えている一方で,昭和からのフルサービス型喫茶店は横ばいとなっている. 関東圏のフルサービス型喫茶店のチェーン店といえば「喫茶室ルノアール≪TYO.9853≫」だろうか. 高級ソファを設置し,客1人あたりのスペースが広い. セルフサービス型喫茶店のアイスティー1杯が300円台に対して,ルノアールは1杯500円台後半と割高となっている.
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ルノアール」は,もともとはせんべい屋の喫茶部問が独立したもので,1964年(昭和39年)に日本橋に第1号店を開店したのが始まりだ. 1983年(昭和58年)には,いち早く100店舗を達成し,1989年(平成元年)には喫茶店業界で初めて株式店頭公開を行った.
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しかし,セルフサービス型喫茶店に押され,総店舗数120店舗から,現在は 87店舗へと減らしている. 2000年(平成12年)には,そば事業に進出するも失敗,2004年(平成16年)には撤退と瞑想する. 市川市の「ルノアール本八幡店」も,2012年10月に完全閉店している.
船橋市高瀬町の京浜食品コンビナート内「キーコーヒー関東工場」.
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2013年には,船橋市高瀬町に「関東工場」がある「キーコーヒー」が筆頭株主(発行済株式の約21%,約6億円)となり,実質上「キーコーヒー」の傘下となっている. 近年,フルサービス型喫茶店が見直され,ルノアールの業績は向上している.
ららぽーとTOKYO-BAYハーバー通りの「スターバックスコーヒー」の店舗.
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逆に,セルフサービス型喫茶店の「スターバックスコーヒー(通称:スタバ)」の顧客満足度が深刻な低下となっている. スタバは,「うるさい」,「客がうっとうしい」,「(客層の)品が良くない」,「落ち着けない」,「背の高い椅子は尻が痛い」,「セルフの割には高い」といった声が多数出ている.
習志野市津田沼4丁目の「コメダ珈琲店津田沼店」.
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フルサービス型喫茶店で拡大展開しているのが都市部郊外型店舗の「コメダ珈琲店」だ. あの喫茶店激戦地区の名古屋で鍛えられたサービスが,東京近郊でも人気を博している. 船橋市近郊だけでも,コメダ珈琲店津田沼店(習志野市津田沼4丁目),船橋日大前店(船橋市坪井東2丁目),船橋芝山店(船橋市芝山4丁目),新松戸駅前店(松戸市新松戸2丁目)と,つぎつぎに出店している.
船橋市習志野台4丁目の「星乃珈琲店習志野台店」.
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これに続けとばかりに拡大しているのが,同じ都市部郊外型(住宅地型)の「星乃珈琲店」だ. 星乃珈琲店」は,2011年3月に埼玉県の蕨市(わらびし)に1号店をオープンさせ,その後つぎつぎに店舗展開している. 船橋市近郊だけでも,東武船橋店(船橋市本町7丁目,2018年2月末閉店予定),船橋咲が丘店(船橋市咲が丘3丁目),幕張店(千葉市美浜区幕張西2丁目),八千代台店(八千代市八千代台南1丁目)と,こちらもつぎつぎに出店している.
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成田街道(国道296号)ぞいの「星乃珈琲店習志野台店」(船橋市習志野台4丁目)も,2012年12月にオープンさせた. 同じ場所には,お箸で食べるスパゲッティー「洋麺屋五右衛門習志野台店」も同日オープンしている. 外食産業全体の業績がよくないなか,郊外型珈琲店の業績は絶好調となっている.
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星乃珈琲店」,「洋麺屋五右衛門」,どちらも最強の外食チェーンといわれている「日本レストランシステム(通称:日レス)」が運営する店舗ブランドだ. ららぽーとTOKYO-BAY にも複数の飲食店を出店している. 日本レストランシステムとドトールコーヒーは,持株会社「(株)ドトール・日レスホールディングス」を設立し,株式移転方式により資本業務提携した.
船橋市高瀬町の京浜食品コンビナート内「ドトールコーヒー関東工場
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星乃珈琲店」の経営は日レス側だが,ドトールの支援を受けて開発された店舗ブランドとなる. 星乃珈琲店」の名は,ドトールの代表取締役社長「星野正則」の苗字をとって店ブランド名にしている. ルノアールは,郊外型店舗として「ミヤマ珈琲」を展開(千葉県は出店なし)している.
船橋市習志野台4丁目の「星乃珈琲店習志野台店」.
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星乃珈琲店」は,「蔵(くら)」をイメージした作りになっている...続きを読む